第8回 わたしたちが未来を考えることの意味

 現在、わたしたちがいま未来を考えることの意味について改めて考えてみたいと思います。

かつて第2次未来予測ブームにさまざまな書籍が出版され人々の注目を集めたのは、そこに一般の人々が当時変化しつつあった社会構造の本質的意味を理解しようとし、それに対していかに備えるべきか考えたいというニーズがあったからに違いありません。とりわけ社会が、経済成長から成熟化社会をむかえつつあった80年代にそうしたニーズは一層高まりました。
「先を見通すことで、新たなビジネスチャンスを考える契機とする。」AIやロボット、ドローンや最先端の医療技術やゲノム解析技術が切り開く新しい社会をいち早く市場化に結びつけようとするこうした関や心ニーズは、第3次未来予測ブームの現在でも変わることはありません。

一方で、バブル経済崩壊やリーマンショックで経済低迷が続き、格差社会が問題となっている現代において、上記関心ニーズとはもうひとつ別の未来予測ニーズが生まれてきているのではないでしょうか。すなわちそれは、「現在、世界や社会で巻き起こっているさまざまな社会課題を解決し、望ましいと考える社会や人々のあり方を希求していくこと」という課題解決ニーズです。近年、SDGsが注目を集めているのも、そうした社会改良の根源的な欲求が高まっていることの証左であると言えるでしょう。

経済成長時代が続いていた第2次未来予測ブーム時には、人々の多くはほぼ単純に未来は今よりも「より良き社会」が実現するものと考えていました。一次的な経済不況がたとえあったとしても、いつか経済は再び立ち直り、私たちの生活はさらに良くなるはずである、と皆考えていました。わたしたちは、科学技術の進歩は人類を幸せにするという盲目的に考えられていたのです。1970年に大阪で開催された国際万国博覧会のテーマは「人類の進歩と調査」でした。ここには、社会の進歩に伴うさまざまな軋轢や問題も、何らかの形で調和されるはずだ、という半ば楽観的とも言える進歩史観に満ち溢れていたのでした。

「技術的進歩が人々の暮らしを一層、豊かにする。」このように単純に考える人は、残念ながら現在ではあまり存在していないでしょう。われわれの望む未来社会の姿は、むしろすでに表面化している各種の社会課題が解決されている社会です。

このように社会状況が変化してくる中で、未来研究の役割も自ずとそのポジションを変えてきています。つまりフューチャー・スタディーズの果たすべき社会的役割は、単に訪れるであろう未来社会を照射するだけではなく、訪れる未来社会を考えた上で(ベースラインとなる未来社会)、望ましい未来社会を改めて構想し(オルタナティブな未来社会、もしくはビジョンとなる未来社会)、そのギャップをいかにして埋めていくかを考え、計画し、実行に移していく。そのための方法論としてフューチャー・スタディーズの果たすべき役割が高くなってきているのです。

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