「家族が幸せになるため」のビッグデータ
現在は、第4次産業革命が進行する社会と言われています。この第4次産業革命の原動力となっているのは、IoT、ビッグデータ、AIなどの領域での技術革新です。
これにより、従来の財・サービスの提供のあり方が抜本的に変わり、生産性が劇的に向上する、所有や消費のあり方が変わる、従来、人間が担ってきた労働や働き方が大きく変わる、などの効果が大きく期待されています。
産業革命の進行は、いずれ私たちの生活に劇的な変化をもたらしてくれるかもしれません。しかし、この産業革命という言葉に、今ひとつ心躍る気持ちになれないのは筆者だけではないでしょう。
科学技術の進歩により人類は幸福になる。1970年の大阪万博のテーマ「人類の進歩と調和」は、まさにこれをテーマとして掲げ、当時起こりつつあった環境問題も技術の力で克服できるなどという半ば盲目的な科学技術に対する信頼に貫かれていました。
このように考えると、この第4次産業革命の目指す先は、果たして本当に生産性の向上や、シェアエコノミ−の実現で良いのか、という気持ちにもなってきます。人間や家庭に数多くのセンサーが取り付けられたIoT社会が目指すものが、ビッグデータとエビデンスに基づく健康寿命の延伸や、テレワークの推進だけでいいのかどうか。いずれにしてもこれらは、資本主義経済下における効率性の追求という文脈下の物語のような気がします。
そこで提案したいのが、家族が幸せになるためのビッグデータやIoT、AIはどうあるべきか、という新たなテーマです。世代間のコミュニケーション不全が語られる昨今、親子や兄弟の不仲やコミュニケーションを豊かにするために、AIやビッグデータは何ができるでしょうか?
効率性だけではなく、人間間のコミュニケーションを豊かにするために、技術が果たすべき役割は何か。効率性オンリーではなく、親子や家族、学校、地域社会といった近隣コミュニティ内におけるコミュニケーションをスムーズにするといった社会的効用を追求するような技術革新が望まれるところです。