新築主義からリペアロジー(修繕主義)の時代へ

近代社会以降、修理することや修繕することは、新しく物をつくることに対し、常に下位に位置づけられていました。

例えば、新築とリフォーム、新車と中古車、新しい靴と靴の修理、新札と旧札を比べてみると、なんとなく私たちは、新しいものに価値を置いてしまいがちです。

近代以前でも、伊勢神宮の式年遷宮や元号などに象徴的に示されるように、過去リセットし、一新することが好きな日本人の国民性も関与しているかもしれません。

新しい物をつくることは、最新技術の導入が可能です。大量生産によるコストダウンも期待できます。一方、保全や修理は、使用状態によっては同じ修理が効くとは限らず、個別状況に応じた対応が必要になります。そのため規模の経済性を享受することも困難でした。

しかし今後、人口減少が進む日本社会では、新しい物に価値を置くのではなく、賢く使い続ける技術や知恵が重要になってくるでしょう。既に日本は、基本的なインフラは十分に整っています。耐用年数を向かえた物を単純に壊して新しく作る、ということではなく、保全し、修繕することにもっと重きを置く必要があります。

日本が本格的な産業近代化を向かえた1960年から、既に半世紀以上の年月が経過しました。高速道路、橋脚、トンネルといった社会インフラも耐用年数を向かえつつありますが、インフラメンテナンス技術を向上させることで、賢く使い続ける術の開発が求められています。マンションについても同様です。権利保有者の3分の2以上の同意が無ければ、建て替え不能という条件は、実質建て替えは難しいことを意味します。ならば、うまく修繕しながら使い続けるしかないのです。

 

リペアロジーとは、修理(repair)と接尾語で学問を表す(-logy)を組み合わせた造語です。こらからの時代は、総合的な修理・保全に関する知の体系化が必要ではないか、という思いを込め命名してみました。

さまざまな物を長く使い続けるための修繕・保全技術を総合的に体系化していくこと。もしかするとここに、日本の将来技術の可能性が潜んでいるかもしれません。

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