「投資型バイオバンク」が健康を資産化する

“バイオバンク”という言葉をご存知でしょうか。個人の細胞や血液などの生体試料を、個人の健康情報、医療情報などと合わせた上で適切に保管して、医療や研究のために役立てる仕組みのことを言います。国立がん研究センターや国立循環器病センターなどの専門医療機関が患者の方の試料を保管している場合もありますし、東日本大震災の後に東北大学が設置した東北メディカル・メガバンク機構などのような、何らかの病気に罹患した方だけでなく、健康な人も参加しているコホート・バイオバンクもあります。

これらのバイオバンクは、医師や研究者が新薬や健康についての研究を行うために活用されます。そのまま、試料を活用する場合もあれば、介入型と言って、何らかの活動をしてもらい、その結果を追いかける場合もあります。

バイオバンクが“バンク”と呼ばれるのは、個人試料を“預かっている”からなのですが、本当の“バンク”=銀行の役割を考えてみましょう。銀行の役割は個人や法人の資産を預かることはもちろんですが、もう一つ、融資という役割があります。資金が必要な企業や個人に貸し付けを行うのは、銀行の大切な役割です。バイオバンクの場合、 “融資”は試料やデータの提供といった形で行われます。とはいえ、今のそれらは主に研究機関に行われることが多く、企業がR&Dや商品開発のために行うことはほとんどありません。また、融資されることで、金利のように預けたデータに価値が生じることもありません。

また、バイオバンクの試料やデータは様々な機関によって保存されており、例えば銀行のATMのようにどこのバイオバンクからでも引き出せるものではないので、利便性を強化するなどの視点からも、まだまだ整理しないとならない側面があります。

例えばデータベースのクラウド化やAIによるデータマイニングなどを駆使することで、バイオバンクを一元で管理して、企業や研究所が必要な手続きを行えば、自由に活用できるようになったとしましょう。バイオバンクはその時に本当に参加者や活用する事業者にとっての“銀行”になるのではないでしょうか。より健康のためにランニングをし、栄養管理に気を付けて食事をとり、日々、そのデータを蓄積しているデータがあったら、そのデータは企業にとっても魅力的なものになりえます。そうしたデータに対しては、企業が何らかの報酬を提示することもありえます。逆に何らかの珍しい疾患を抱えた人の場合も、その疾患の研究に企業が報酬を出すかもしれません。こうした形で自身に関する健康上のデータを蓄積することが、そのまま自らへの資産となる。こうしたバイオバンクによる資産運用は、今後大きなビジネスになるかもしれません。

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