「聴く」の機能を拡張する“未来イヤフォン”

昨今のイヤフォン市場はすさまじい勢いがあります。様々なサブスク系の映像や音楽配信、ゲーム等が楽しめるようになった現代では、高性能な機能をもつイヤフォンが次々に登場しています。イヤフォンを装着すれば、現実の世界から逃避したい、映像や音楽の世界に入り込みたい時、自分一人の世界の中に没頭することができますよね。

このイヤフォン、最近では音を聴くだけでない多様な使い道も研究されているようです。

現在は、主に音楽や情報を聴くために使われていますが、将来は、逆にイヤフォンが自分の身体情報を収集するようになるかもしれません。

例えば、イヤフォンで体調管理できるようになるかもしれません。耳は脳の活動を知るために最適の器官です。脳波を常時測定することで、いずれ認知症や睡眠障害等多くの診断にも利用されることでしょう。

すでに脳波を活用し、気分をすっきりさせたり、ストレス解消してくれるイヤフォンもあるそうです。集中力にかかわる脳波を計測し、集中している時や気が散っている時を知ることもできるそうです。それがあれば、自分が集中すべき時間帯や休むべき時間帯もわかるようになりますよね。

将来のイヤフォンは、電子皮膚(通称E-スキン)といったパッチ形状になっている可能性もあります。MITのジーワンキム准教授によると、E-スキンは、粘着パッチのようなもので、耳の後ろに貼り付けると、体内の水分量や汗の成分を把握したり、視線の方向を追うこともできるというのです。イヤフォンの機能と連動させたり、イヤフォンの機能を組み込んだE-スキンができる可能性もありそうです。

今後は、イヤフォンを通じて本人の体調変化や感情を測定し、その人のいる場所や環境を感知して、状況に最適な音楽や映像等のコンテンツをレコメンドしてくれるサービスなども登場するかもしれません。ストレスや緊張度の高い時はリラックスできる音楽を流し、集中できていない時は気分転換ができるような映像をお勧めしてくれたり、といった感じに。

そのうち、映像のARのように、音のARも発達するかもしれません。現実世界の音の情報にデジタルの情報を重ねた、ARグラスならぬARフォンとでもいいましょうか。すでに実際に、音の流せない場所でその場所の景色に似合う音を流して演出するなど、美術館や観光地、空間演出などでもビジネス用として実験されているようです。

更には、翻訳機能の進化もあるかもしれません。どの国へ旅行に行っても、イヤフォンを通せばリアルタイムに相手の会話が翻訳されて、どの言語の人の話も正確に聞き取れるようにもなったら?見知らぬ国へ旅をしたり、仕事をしたりする人が増え、国境や人種の境界線がなくなるかもしれません。もし自分のペットの言葉が人間の言葉に翻訳されたら?鳥のさえずりがクラシック音楽に変換して聴こえてきたら?

このように、未来のイヤフォンは、自分の世界に閉じこもるためのツールではなく、自分の身体の状態を知り、より心地よい状態へ導いてくれる、人と人とのコミュニケーションをより豊かなものにしてくれる存在に進化している可能性も秘められています。

必要のない街の喧噪や、聴きたくない相手の小言はすべてミュートにして、重要な相手のメッセージだけが耳に届き、常に自分の状況や気分に合わせた音や情報だけが流れてくる・・・そんなパーソナライズされた音の世界がくる日もそう遠くはないかもしれません。

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