フードロスゼロに向けた”冷蔵庫ネットワーク”

海外では数年前から普及し始めているカメラ内臓冷蔵庫。当初はスマホで外から冷蔵の中が見られる、という触れ込みでしたたが、今では、自動的に冷蔵庫の中のものをリスト化して管理してくれるようになっています。冷蔵庫のカメラが画像認識をして、どんな食材や調味料、飲料が冷蔵庫に入っているかだけでなく、いつ何が冷蔵庫に入れられたのか、ラベルに記載されている消費期限も読み取る。冷蔵庫は食材保管庫であり、同時にリアルタイムの食材データベースになっています。

さらに、このような冷蔵庫は当然コネクテッド機能も搭載しているので、クラウドと繋がり、冷蔵庫の中にある食材から、家庭ごとの好きな食べ物などの傾向やアレルギー情報なども加味したレシピ提案をクラウド上の情報から提案することができます。冷蔵庫の表面にはモニターが搭載され、リビングの家族掲示板の機能も有しています。つまり、家族の予定を冷蔵庫が把握するようになるのです。こうした冷蔵庫は既に海外の一部で導入されています。こんな冷蔵庫が普及していくとどんな未来になるのでしょうか。

まず、この冷蔵庫を保有する家庭では、3つのメリットが生まれるでしょう。

1.スーパーなどで食材など買おうとしたとき、「あれ、まだあったかな?」と悩んだり、「購入して帰ったら、同じものがあった」ということが無くなる。

2.「今日何作ろう?」と悩む前に、過去に食べたものと家族の予定、使うべき食材を踏まえて献立の提案をしてくれる。

3.「余計に買いすぎて無駄にしてしまう」ことや、「食べるの忘れてて、気が付いたら腐ってた」というフードロスが無くなる。

これらは生活者の便利が進む領域が中心でありつつ、結果的にフードロスも無くなり、金銭的な節約にも繋がっていきます。こういった冷蔵庫を家庭に導入した人は、これらの便益は手放せなくなるでしょう。

さらに今後、冷蔵庫はどんどん有能になっていくでしょう。カメラなどのセンサーやAIの進化、RFIDタグなどの工夫で食材把握精度が向上するだけでなく、作り置きした料理の監視もしてくれるようになるでしょう。カレーを作って、冷蔵庫に入れておくと、菌の繁殖状況をセンシングし、自動的に消費期限を算出してくれるようになる。「先週作ったカレー、まだ大丈夫かしら?」という心配をする前に、冷蔵庫が「明日までに食べた方が良いですよ。」と言ってくれる。

目を向けたいのは、その先にある暮らしです。このような進化した冷蔵庫が普及することで、社会全体のウェルビーイングに繋がっていく可能性があるのです。

各家庭の食材保有及び消費状況を把握できることで、商圏で必要になる食材が予測できます。そうなるとスーパーマーケットなどの小売店の仕入れが変わる。家庭でのフードロスも課題ですが、小売り・流通のフードロスも社会問題であり、商圏における確かな消費予測、需要予測ができるようになることで、店頭での見え方を意識して、多くの量を入荷して陳列することが無くなります。

この実態は、物流の効率化も実現します。10数年後には、多くの人が生鮮食材も宅配するようになってくるはずです。いつ、どこに、どれだけの食材を届けるかも冷蔵庫の情報があれば、注文前に予測ができるようになるのです。人によっては、自動注文で食材を頼むようになり、冷蔵庫から提案されたレシピをそのまま受け入れて食べるような人も増えてくるはずです。こうした人々がある程度の比率になることで、社会の無駄はどんどん効率化されていきます。しかも、生活者一人ひとりは、悩まない、買い物しなくていい、便利で快適な毎日を実感できている状態です。

人々のフードロス意識も重要ですが、冷蔵庫ネットワークの拡がりで、毎日の食に関する個別最適と小売りや流通・物流、などの全体最適を実現し、日本の、そして世界のフードロスを大きく減らしていく。その先には農家などの生産領域、外食産業、食品加工なども含めた、新しい食のエコシステムを生み出していくはずです。

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