ジェンダーレスファッションがいざなう
”シームレスアイデンティティ”の時代

そろそろ、中学受験、高校受験が本格的に始まるシーズンになってきました。学校選びの中で、特に女子生徒の間では、今でも制服はそれなりに重要なものの一つかと思いますが、学校の制服の在り方もだんだんと変わってきています。

昨今の中学、高校の制服では、女子生徒向けのスラックスの導入が進んでいます。学校総選挙プロジェクトの調査によると、2021年時点で、全国の制服が指定されている都道府県立高校のうち、44.4%(3073校中1365校)が女子制服にスラックスを採用していると答えているとのことです[1]

とはいえ、現状はスラックスを採用しても、なかなか普及しないという面もあるようです。女子生徒がスラックスを選ばない理由としては「目立ってしまいそう」「変な誤解を受けそう」といった声があげられています。また、スラックスは女子制服のオプションになることも多く、スカートを買ったうえで追加購入になるので費用負担面から買わない声も多いそうです。

こうした問題の解決策として、いくつかの学校ではジェンダーレス制服として、男女区別せずに、どのタイプも選べるように規定しているところが出てきています。姫路市の中学校では、制服においてスラックスを男女共通の標準にして「女子はスカートも選べる」としたところ、スラックスの着用率が4割に上りました[2]。また、制服を幅広いパターンで用意し、男女どちらでも着用できるという学校も増えています。

ジェンダーレス化の流れはこうした制服だけでなく、ファッション全般でも増えてきており、世界的にも大きな潮流となっています。海外のファッションアイコンとよばれる人たちの多くが導入しており、ビリー・アイリッシュもその一人です。ダボっとして体のシルエットを意識しないファッションは、彼女の写真や映像を見たことある人ならば、覚えがあることでしょう。

日本国内でもファーストリテイリングはユニクロとGUの両方で年々、ジェンダーレスのアイテムを拡大しています。その一方で、全アイテムが男女兼用のMUJI Laboの展開など、早くから推し進めていた無印良品は、「ジェンダーレスが押しつけになっていた」として軌道修正をしており、まだ、消費者の意識が追い付いていない面もあります。

ジェンダーレスは化粧品分野でも広がりつつあります。もともと女性の専用品という認識の強い分野ということもあり、コスメやスキンケアは男性専用よりも男女兼用のほうが、受け入れられやすい面もあるようです。

昨今のジェンダーレス化の流れは、LGBTQの流れにあるのは、言うまでもありませんが、もっと大きな個人のアイデンティティの変化を表しています。いわゆる過去の異性装は「女性向けのファッションをする男性という“私”」「男性向けのファッションをする女性という“私”」といった、自分のアイデンティティを表明するものとして機能していました。それは、必ずしもLGBTQ的なものに限らず、自身のファッションへのこだわりや思想信条などの表明でもあります。昔から、ファッションはそうした個人のアイデンティティの表明にもなっていました。逆に男性らしく、女性らしくありたいというファッションもまた、個人のアイデンティティの表明にもなっています。ファッションと自身のアイデンティティの表明は強く結びついています。

しかし、ジェンダーレスファッションはいわば「誰でも着られるファッション」です。誰でも着られるファッションとはつまり、ファッションによって自身の個性は規定しにくいファッションでもあります。ファッションによる自身のアイデンティティは表明しなくても、他の様々なことでアイデンティティを表明する。自分がこだわりたいことについては積極的にこだわりつつ、こだわりのないところについては、できるだけ主張をしないというのが、昨今のZ世代以降のアイデンティティ感覚です。

昭和の時代にテレビや雑誌で描かれていた未来の生活者の姿は、ぴちっとした全身を覆うボディスーツのような姿で、性差を強調したような姿でした。しかし、現実の未来はどうやら性差を感じさせないだぼっとした姿になっていきそうです。時代の変化とは非常に興味深い変化と言えそうです。

[1] https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000665.000000983.html

[2] https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0012/topic019.html

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