“長寿社会“から“ほどほど長寿”社会へ

厚生労働省の発表によると、2020年時点の日本人の平均寿命は、女性が87.74歳、男性が81.64歳で、いずれも過去最高を更新しています。

数年前よりさまざまな場面で、「人生100年時代」というキーワードが聞こえてくる機会が多いですが、人々がこの言葉に対して抱く気持ちは、一概に「喜ばしい」ことだけではないでしょう。

平成28年に日本生命が実施した「長生き」に関するアンケート調査※1によると、対象者20〜70代10,973人のうち、「長生きしたい」と思う人は、半数に満たない46.3%、「長生きできる」と考えている人はさらに低い29.7%という数値でした。一方、「長生きすることに不安を感じている」人は54.7%と半数を超えており、長生きすることに不安を感じている人が多いことが理解できます、

ある程度年齢を重ねた方であれば、「きんは100歳、ぎんは100歳」というCMコピーを覚えていらっしゃる方もいるでしょう。ともに100歳をむかえた双子の姉妹、きんさん、ぎんさんが話題となったのは、今を遡ること30年前の1992年のことでした。当時の高齢化率(人口に占める65歳以上の人口が占める比率)は13%程度であり、現在(2022年)の高齢化率28.8%の半分以下。現在のように高齢化に伴うさまざまな課題が社会問題化する前の、まだ長寿=「喜ばしいこと」として多くの人が認識していた幸せな時代のことでした。

長生きの先にあるかもしれない、「認知症になってしまうかもしれない」リスク、「介護状態になるかもしれない」リスク、「生活費が乏しくなり貧困になるかもしれない」リスク。現在の超高齢社会は、こうした長寿に伴うさまざまな生活リスクに晒されている時代と言えるでしょう。こうしたリスクに備えるために機能するのが、「保険」ですが、そうは言っても全てのリスクを「保険」が全て軽減してくれるわけでもありません。

こうした社会背景の中、今後、「積極的に長生きを求めようとしない価値観」が一層、高まってくることになるでしょう。「より健康に、より長生きする」という価値観から、「長生きならずとも、より良く生きる」価値観への転換が起こってくるかもしれません。

やみくもに健康を追いかけ、本当に食べたいものを控えたり、禁煙を守る、ということではなく、適度に健康を意識しつつ、やりたいことはやるといった“ほどほど長寿”を望み、それを生活スタイルとする人々が次第に増加していくことでしょう。

そしてもしかすると、「長生きしないためのノウハウ本」や、「80歳で寿命を迎えるための人生本」などが、ベストセラーとなる日が近いかもしれません。

 

※1日本生命「長生き」に関するアンケート調査: https://www.nissay.co.jp/news/2016/pdf/20161018.pdf

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