インタレストを刺激する“VRエデュケーション”

『「危なかった!」間一髪でよけたのは、葉先にぶら下がって滴る朝露だった。見上げた草むらから、一羽の蝶があの花にとまるのを息をひそめてじっと待った。僕はカマキリ。』 

これは近い将来起こりうる、子どもが夏休みの自由研究をしている様子です。VR眼鏡を通して“虫眼鏡”ならぬ“虫視点眼鏡”で「虫の世界」の研究をしています。1989年公開の映画『ミクロキッズ』(Honey, I Shrunk the Kids)は、父親が発明した物体縮小機によって6ミリのサイズに縮んでしまった少年たちの冒険を描くファンタジー・アドベンチャーですが、目の前に広がる光景はまさにあの世界です。 

奇しくもコロナ禍は、いわゆる、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させ、多くの学校でオンライン教育をスタートしました。今年4月より「GIGAスクール元年」ともいうべき、小中学校における一人一台端末環境下での学びが本格的にスタートし、また先日は新たな行政機関としてデジタル庁も設立されました。今後は、顕微鏡や望遠鏡と同じような感覚で、VRやウェアラブルデバイスなどが様々な教育現場で活用され、実世界と情報世界を融合させたサイバーフィジカルな学習スタイルが取り入れてられていくことが考えられます。 

眼鏡(ゴーグル)一つでテレポートやタイムスリップが可能となり、例えば歴史の授業ひとつとっても、かつてのような年代や事実を丸暗記していく知識詰め込み型ではなく、古代生物に触れたり、国内外の名所や歴史遺産を訪問するなどVR空間で実際に体感して脳裏に焼き付けながら学習していくことがニュースタンダードになるかもしれません。 

学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校では、隈研吾氏がデザインを手がけたVR校舎でのオンライン授業を今年4月より配信スタートしました。授業ではVRの特性を活かし、例えば古生代のアンモナイトも立体的な教材を手に取って360度の視野で見て学ぶといったことが可能になっています。また、生徒はアバターとなってVR空間上の教室で、まるでリアルな教室のようにクラスメイトの存在も周りに感じながら授業を受けることができます。

もうひとつ、別の事例を紹介しましょう。東京大学は、2020年3月、VRを使ってバーチャル安田講堂を作り、その前でバーチャル卒業イベントを開催。これを発展させた形で、秋には赤門をはじめ様々な施設や建物をVR上で再現し、高校生向けのオープンキャンパスを実施して14,000人ほどが来場する盛況を収めました。さらに、東大総長の藤井先生のアバターも作成し、VR安田講堂のなかでプレゼンテーションを行う取り組みも実施。この技術を応用して、講堂内で講演会や授業を行うこともできるようにしました。

コロナ禍において、人と人がリアルに集まれる機会は減り、仕事はリモートワークがニューノーマルとなりましたが、子どもたちの学習スタイルもこの2年間で大きく変化しました。ICT環境整備の地域間格差など、まだまだ課題は残されてはいますが、アフターコロナにおいても引き続き、オンラインと対面のハイブリッドな環境での学習スタイルが定着していくことでしょう。しかし、オンオフ関係なくどんな環境においても大切になことは、子供たちの学びたいという好奇心を絶やさない工夫や、子ども同士が交流しあえる場を提供していくことです。未来の夏休みの予定は、友人家族と昆虫採集ではなく、冒頭のような昆虫サイズの大冒険かもしれません。 

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